知人のAさんは私のことを「ジョイ」と呼ぶ。イントネーションは「女医」ではなく「joy」。
私が温泉津に住み始めた頃、町の人が「ジョイ」「ジョイ」と噂するのを聞いて、名前かな?と思ったのだとか。そのころ見た目は日本人だけど欧米系の名前の人が町に居たものだから、どう見ても日本人な私が「ジョイ」という名前だってあり得ると判断したらしい。
Aさんは温泉を経営している。うちからAさんの温泉まではぶらぶら散歩していくのに丁度いい。遅い夕方や、温泉が閉まる間際の夜に思い立って歩いていく。
ご飯を炊いておにぎりを握ったから差し入れに、とか、郵便局に手紙を投函しに行くついでに、とか、都会にいた時に比べて全く歩かなくなったから歩数を稼ぐために(これは切実に)、とか。何だかんだ理由を作ってフラリと立ち寄る。
「やぁ、Aさん」
Aさんは拒まない。笑って迎え入れる。誰に対しても気安く声をかけ、相手を気遣う言葉がさらりと出る。当たり前のように。愛想のない私はしばしば反省する。
歯に衣着せぬAさんの言葉は時に痛くて優しい。思いもよらぬ反応にカチンとやられ、うぅっとなるが、新たなものごとの捉え方を知り、新たな視点を得る。
あの温泉にAさんがいる。またフラリと立ち寄る。
「やぁ、ジョイ。丁度いいところに来た。」
ここ何年か、健診の場で「頭の形が気になる」という声を聞くことが増えました。
以前はほとんどない質問でしたが、近年、子育て世代の間で話題になっているのでしょうか?
頭の形を整えるヘルメット療法も広く知られるようになり、頭の形外来もポツポツと増えてきたと感じます。
では、どういう頭の形が気になるのか?
圧倒的に多いのは、左右どちらか片方の後頭部がペタンコになっている。
次いで、後頭部がペタンコで、いわゆる絶壁になっている。
その他、頭が前後に長い、こめかみ部分が凹んでいる、おでこが出ている、後頭部に凹んでいるところがある、などなど。
赤ちゃんは、これからどんどん大きくなっていく存在です。
健診では、身長、体重、頭囲を計測しますが、通常まず大きくなるのは頭です。
赤ちゃんは、頭→身長→体重、の順で大きくなっていきます。
赤ちゃんの頭の骨は柔らかいので、ずーっと同じところに圧がかかり続けると、その部分は平らになってしまいます。
丸めた粘土を平らな板の上に置いたら、板に接している部分は平らになりますよね?
重力が働いて、粘土全体の重さが、板と接している部分にかかってきます。
同様に、赤ちゃんの頭にも重力がかかります。
となると、例えばずっと右を向いていたら?頭の右側は平らになりますよね。
赤ちゃんは、何としてでも頭を大きくしたいので、圧がかかっていない部分で大きくするしかありません。結果として頭の形は真ん丸ではなくなってしまいます。
頭の骨のどの部分にどのように圧がかかっているのか?が、頭の形を決めていくことになるのですね。
ここで絡んでくるのが、持って生れた性格と、筋肉の質などの体質。それに加えて環境です。
例えば、おっとりしていて筋緊張が低くて柔らかい赤ちゃんだと、あまり動かず静か~に上を向いたまま、だったりします。
「静かにしてくれてて、ありがたいわ♡」と放っておかれると、ますます上ばかり向くことになります。
結果として後頭部がペタンコの絶壁になりますね。
あるいは、好奇心旺盛で右向き癖のある赤ちゃんの、右側に色んな刺激があったら?
ベビーベッドの左側は壁。そっちを向いてもツマラナイ。
一方、右側には人がいる、右側で物音がする、右から話しかけられる、右の方が明るい、右側に気になるものが沢山ある!
断然、右を向きたくなりますよね?
結果的に右の後頭部がペタンコになります。
つまり赤ちゃんが持って生れた性質に、周囲の環境も大きく影響するのですね。
変形が強くなると、ますます頭の向きが固定されて、更に変形が強くなっていくこともあります。
これから、どんどん発達していく赤ちゃんにとっての理想はやはり、できるだけ左右差のない姿勢と体の使い方、です。
赤ちゃんをよくよく見て、どう関わり、どう環境を整えたら、右も左も大きな差がなく自在に使えるようになるかな?と試行錯誤してあげてほしいなと思います。
ただし、中には頭蓋縫合早期癒合症といった頭蓋骨の病気のこともありますから、頭の形が気になったら一度かかりつけの先生に診てもらって下さいね。