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Yunotsu Kodomo Note
2026.02.15 - 11:14 PM Yunotsu Kodomo Note

『昆布を食え、昆布を』

イシハラ昆布のイシハラさんが、

島根県に来られるという情報を得て、

お隣の江津市へ出かけて行った。

イシハラさんは、礼文島で昆布漁をされている。

海に出て、鎌で昆布を刈り、

晴れた日に干場で昆布を並べて、天日干しにする。

天日にこだわり、

丁寧に手作業で干し上げた天然利尻昆布を抱えて、

日本のあちこちへと行商に出られている。

私がイシハラ昆布を知ったのは、

ちょくちょく買い物に出かける江津市の食品店でだった。

『昆布を食え、昆布を』

白い紙に、太めの黒い文字で書かれた、インパクトのあるタイトル。

興味を惹かれて手に取り、読んだ。

イシハラ昆布について紹介された小冊子だった。

イシハラさんが礼文島で昆布漁を始めるまでの経緯と、

漁師になってからの出来事が綴られていた。

北の果ての島で、天然、天日干し、手作業にこだわり、

一途に探求していくイシハラさん。

小冊子には、

イシハラ夫妻と小さな3人の子どもの写真が

掲載されていた。

遠い北の島で自然と共に暮らす家族のイメージが、

やや色調を押さえた写真の画像と相まって、

記憶に残っていた。

当日、仕事が終わって、お店へと向かった。

閉店した店内に入る。

丸い眼鏡をかけ、柄シャツを着た

クルクルパーマの男性が、明るい表情で立っていた。

目が合う。

こんばんは。

誰だか分からないが、挨拶する。

こんばんは。

二言三言言葉を交わす。

イシハラです。

えっ?!

言葉を失い、しばし見詰める。

この人が?

この明るい表情をした、ポップな雰囲気の男性が?

あの小冊子から、私の頭にインプットされていたイメージとは、程遠い人物だった。

そうなんですね!初めまして。

イシハラさんを紹介した小冊子を読んで・・・

あっ、あなたでしたか!あの冊子が欲しいと仰っていたのは。

まだあるんですけど、連絡頂いたのが家を出た後だったので、今回は持って来れなかったんです。

食事の準備が進められ、

イシハラさんを囲んでの夕食が始まった。

大人達に子ども達、賑やかな夕食会。

興味津々で皆がイシハラさんに質問を投げかける。

日中の販売会はイシハラさんのお話会と化したそうで、

イシハラさんの声は少しかすれていた。

それでも明るく屈託のない表情で、

何でも聞いて下さい、と言う。

皆それぞれに聞きたいことがあり、尽きない。

興味深い昆布漁の話や、海の現状を聞く。

昆布が、どんどん獲れなくなっているという。

真昆布は天然物が獲れなくなっており、

養殖に力を入れている。

利尻も、もしかしたらあと数年かも知れない。

今、まだ手に入るうちに、

この美味しい昆布、天然天日干しの昆布を、

食べてもらいたい。

一人でも多くの人に届けるために、行商をしている。

時間があっという間に過ぎていく。

興味は尽きなかったが、途中で退出することにした。

昆布買わなくていいの?

と声が掛かったが、

昆布の販売は終了しており、すっかり片付けられている。

翌日、大田市で販売会があるという。

明日買いに行きます。

イシハラさんに告げ、皆に挨拶して帰った。

翌日の午後、イシハラ昆布の販売会がある大田市のお店へと向かった。

辿り着き、中に入る。

皆が椅子に座って和やかに食事をしていた。

近くのカフェで、作ってもらった軽食を食べているところだった。

塩おむすび、白菜の漬物、そして昆布と椎茸の佃煮。

白菜の漬物には、千切りされた昆布が入っていた。

私もイソイソとセットを注文し、皆に混じった。

昆布を口に入れる。

思いがけない歯応え。

しっかりと染み込んだ味。

何て食べ応えのある昆布の佃煮。

白菜もおむすびも美味しい。

イシハラさんを中心に、見知らぬ人々と歓談する。

お腹を満たし、すっかり和んで昆布を購入する。

目の前にいるこの人が手間暇かけ、

ここまで運ばれてきた昆布。

噛み応えのある、しっかりした昆布。

旨味がぎゅうっと凝縮した昆布。

かごに盛られた完全天日干しの昆布の、

何と旨そうなこと!

あの人と、あの人と、あの人にも買って、

自分の分はどのくらいにしようか?

イシハラさんのどこか突き抜けた明るさ。

大らかな佇まい。

自然や生きているものを相手に仕事をする人達に共通する何かを感じる。

どれだけ手を尽くしても、自分の力の及ばないところがあることを経験している人達。

どこかの時点で、もう委ねるしかない領域があることを知っている人達。

最善を尽くし、何かに委ねた結果、ここにある得も言われぬもの。

あ、あの人にも買ってあげよう。

近い未来に、手に入れることが出来なくなるかもしれない、この逸品を、誰と分かち合おうか?

イシハラ昆布(礼文島) https://www.instagram.com/ishihara_konbu/

希樹/Salema(江津市) https://www.instagram.com/hakariuri_salema/

めぐる屋(大田市) https://www.instagram.com/meguru_ya/

花種(大田市) https://www.instagram.com/hanadane_/

Yunotsu Kodomo Note

2026.06.15
てくてくてくてく松江散策

松江を歩いた。

日曜の早朝、家を出る。

松江で開催された

養老孟司先生の講演会に

参加するために。

松江まで車で行くという選択肢もあったが、

今回はそうしなかった。

そうしないために早朝に出たのだった。

日曜日の早い朝の道は空いていた。

出雲に着く。

よかった、間に合う。

7時40分発の列車に乗るために出雲市駅へ。

列車の案内表示を確認する。

おや?

7時51分、米子行きとある。

おかしいな、

私の事前調べでは7時40分発、

9時11分松江着だったのだが。

駅員さんに尋ねる。

7時51分発は何時に松江に着きますか?

えーと、ちょっとお待ち下さいね。

51分発・・・松江は8時34分ですね。

ありがとうございます。

講演会は10時から。

1時間半も前に着くことになる。

次の列車は?

・・・うん、これに乗ったら間に合わない。

そのまま7時51分発に乗ることにした。

列車での移動はいい。

手も足も自由な時間。

車内はゆったりしている。

溜めていたメールを読み、返信する。

あとは、ぼーっと外を眺めた。

山の緑、

田んぼの緑、

家々、

時折湖。

8時34分松江着。

講演会場に直接向かうには早い。

少しブラブラする。

知人がお勧めしてくれた神社まで歩いた。

途中の道で、

随分と前に連れて来てもらった

コーヒー屋さんがあることに気付く。

ピスタチオのシュークリームの

記憶がよみがえる。

神社は静かだった。

ひとり、女性が本殿の前で手を合わせている。

手水を使い、本殿へと向かう。

お賽銭を投げいれ、二礼二拍手一拝。

境内をクルリと回ってから外へ出た。

まだまだ時間はあるが、もう向かおうか。

ブラブラと歩いた。

歩道があって歩きやすい。

何となく風情のある町並み、

小さな水音を立てる小さな川。

ブラブラブラブラ。

こっちで合っているのだろうか?

何となく違う気がしてきた。

前からやって来たスポーツウェアの女性に尋ねる。

すみません、湖はあっちですか?

女性はしばし考えて、

180度逆の方向を指さす。

あっちですね。

えっ?

見当違いの方向に歩いてた?

ありがとうございます。

あと、35分。

間に合うか?

ともかく一旦駅前に戻ろう。

せっせと歩いて松江駅へ。

あと25分。

事前調べでは駅から会場までは徒歩23分。

もう歩いてでは間に合わない。

バスは約12分だったはず。

バス停に向かうが、

はて?何番のバスだったっけ?

セカセカと観光案内所へ。

2番か3番のバスだと教えてもらう。

残り15分。

2番のバス、

は、1分前に出たところだった。

次のバスは10時。

事前調べではタクシーは約7分だった。

もうタクシーしか手段がない。

自分一人なら遅れたって構わないが、

知人と待ち合わせしている。

チケットは私の手元。

タクシー乗り場で待機していた、

タクシーに乗り込んだ。

行き先を告げ、

タクシーが走り出す。

駅前を離れ、右へ左へと曲がる。

ここはさっき歩いた道。

さっき渡った橋。

うんうん、ここまで歩いた。

四つ角でタクシーは

私が選んだ道と真逆の道へと曲がった。

会場前には開演5分前に到着した。

ちょうど知人とバッタリ出くわした。

一緒に会場内に入る。

養老先生の縦横無尽のお話は面白かった。

間に合ってよかった。

15,799歩。

うん、歩くために

わざわざ列車で行った甲斐があった。